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株式会社マルケイ
(愛知県名古屋市)

江﨑さん 株式会社マルケイは1968年(昭和43年)創業。総合建設業として、住宅、商業施設、アパート・マンションから官公庁に至る様々な建物の新築・改修工事を行っている。
従業員数は16名(2025年5月現在)。
今回は、代表取締役社長の江﨑賢一さんからお話を伺った。
週休二日制の導入や、従業員同士のコミュニケーションの機会の積極的な設定、家族との記念日も大切にできる工夫など、仕事もプライベートも充実するための取組みを進めている。
最初に、健康経営に取組むきっかけと、コミュニケーション活性化の取組みについて、お話を伺った。
従業員の健康意識を高め、公私のメリハリをつけて仕事をしてもらうため、業界的には早くから週休二日制を導入しました 「2014年頃から20代の従業員が増えはじめたことをきっかけに、若い世代が長く働き続けられる職場にしたいということを考えるようになり、健康経営に取り組みはじめました。 “楽しい会社”、“楽しい仕事”、“元気に働く環境”を実現したいと考え、そのためには心も体もしっかり休めることが必要だと考えました。そこで、まずは当社のビジョンを、従業員と一緒に考えて作りました。その中には、『健康に気を配り、毎日を楽しむ』という言葉も入っています。」
「従業員に健康意識を持ってもらうためには、公私の切り替えを意識してもらう必要があると考え、業界的には早くから週休二日制を導入しました。その結果、従業員は自らの働き方について考えるようになり、無駄を省いた仕事の仕方をするようになりました。4年前の時点で、この規模の会社であれば、売上はこのあたりで頭打ちだと考えていましたが、従業員それぞれの成長が会社の業績に明確に表れるようになってきていて、今期は、最高益となる見込みです。従業員が健康に働けることが、会社全体に良い影響を与えてくれていると実感しています。」
毎月1回の懇親会や社員研修旅行など、仕事中になかなかできない従業員同士のコミュニケーションの機会を積極的に作っています 「また、当社はそれぞれが現場に出向いて作業をすることが多く、なかなか従業員同士で顔を合わせる機会が少ないため、仕事以外の場での従業員同士がコミュニケーションが取れる機会を積極的に作っています。」
「例えば、毎月1回懇親会を開催しています。開催月に誕生日がある従業員には、プレゼントやケーキを準備してお祝いもしています。また、コロナ禍で中止になっていた社員研修旅行も2023年から再開しました。その他、従業員の家族も参加できるイベントとして、餅つき大会やバーベキューも毎年開催し、家族ぐるみでの交流の機会も大事にしています。」
カレンダーに家族の記念日も記入し当日には上司から声をかけるなど、プライベートも充実できる工夫をしています 「社内に掲示しているカレンダーには、従業員本人の誕生日に加えて、家族の誕生日や記念日も記入しています。従業員同士でお互いの記念日を把握できる環境にすることで、記念日当日は家族との時間を優先するような声かけを上司や周りができるようにしています。また、毎年クリスマスには、全従業員にクリスマスケーキを贈っており、ご家族にもとても喜んでもらっています。仕事もプライベートも充実させることで、より良いパフォーマンスにつながると考えています。」
ストレスチェックの実施や、ストレスチェックの結果を踏まえたメンタルヘルス研修の開催など、ストレスチェックを基点とした様々な取組みを通じて、職場環境改善につながっている。
次に、ストレスチェックの取組みやメンタルヘルス研修について、お話を伺った。
心の健康にも意識を向けてもらうことを目的にストレスチェックを導入しました 「ストレスチェックは2022年から導入し、毎年3月に実施しています。当社はストレスチェック実施義務の対象事業場ではありませんが、身体の健康だけでなく、心の健康にも意識を向けるきっかけとして重要だと考えています。」
「オンラインで受検できるので、受検後すぐに自身の結果確認ができ、メンタルヘルス不調に早い段階で気づくことにつながっていると考えています。受検率は4年連続で100%です。実施は外部のストレスチェック業者に委託して、高ストレス者への医師による面接指導の体制も整えていますが、これまでに利用実績はありません。」
ストレスチェック結果を踏まえて、管理職を対象にしたメンタルヘルス研修も定期的に開催することにしました 「ストレスチェックの結果を確認したところ、2022年と比べて2023年は高ストレス者が増えていました。何か対策を講じたいと考え、2023年7月に、愛知産業保健総合支援センターの支援を活用して、管理職を対象にしたメンタルヘルス研修を初めて行いました。研修内容は、メンタルヘルス不調のサイン、ラインによるケアや管理職の役割、メンタルヘルス不調者に対する対応の手順、管理職自身のセルフケア、管理職が陥りやすいメンタルヘルス不調などについてで、1時間で実施してもらいました。こうした対策の効果もあったのか、2024年には高ストレス者数が減少し、従業員のストレス状況に改善がみられました。」
「その後もメンタルヘルス研修は継続的に実施しており、2024年7月にも、職場環境向上のためのメンタルヘルス対策について学びました。研修後に参加者にアンケートを行ったところ、『また参加したい』との回答が100%でしたので、今後も研修は継続して行っていきたいと考えています。」
集団分析結果を参考に様々な取組みを行うことで、“職場の対人関係でのストレス”などの項目に改善がみられています 「会社全体のストレス状況を把握するために、集団分析結果も毎年出しています。年度ごとに変化がみられますので、結果を踏まえて対応策を検討しています。」
「2025年は、管理職向けメンタルヘルス研修の他に、コミュニケーション活性化の取組みを積極的に行ったおかげか、“職場の対人関係でのストレス”や“活気”の項目で改善がみられ、より良好な人間関係が構築されていることが確認できました。様々な経験を経て当社にたどりついている従業員も多く、ストレスへの耐性の程度もさまざまです。だからこそ、皆で協力しフォローし合うことのできる職場づくりが大切だと考えています。」
健康診断後の地域産業保健センターの活用や、“治療と仕事の両立支援マニュアル”の整備など、疾病の予防・早期発見から両立支援まで、一人ひとりの健康と就労に寄り添う仕組みになっている。
最後に、地域産業保健センターの活用と治療と仕事の両立支援について、お話を伺った。
健康診断の実施後には、毎年地域産業保健センターの支援を活用しています 「体の健康の維持向上にも力をいれています。まず、健康診断後、再検査・要精密検査の対象となった従業員には、医療機関の受診を促しています。また、地域産業保健センターに毎年依頼し、医師に就業上の措置に関する意見聴取も行っていただいています。再検査後も経過が気になる従業員がいるときは、今後どのような健康保持に努めるべきかという指導もしていただきました。意見聴取後の再検査によって、前立腺がんの早期発見につながったこともあります。」
「2023年には、医師による職場巡視も行っていただきました。事務所内や休憩室、常備薬の設置状況、喫煙所の分煙対応の状況などについて確認の上、助言をいただきました。2024年は、全従業員の健康状態について、『健康です』とのお言葉をいただきました。健康診断はこれまでの生活習慣を見直すきっかけになりますが、受けて終わりではなく、受けた後にどう対応するのか大切だと考えています。」
“治療と仕事の両立支援マニュアル”を作成し、治療をつづけながら働き続けることができるよう雇用の継続を目指しています 「過去には、脳梗塞や糖尿病などによって止む無く辞めていった従業員もいました。私自身も、3年間にわたって病気のため入退院を繰り返した経験があります。そうした経験から、従業員がたとえ病気の診断を受けたとしても、治療を受けながら安心して働くことができるようにしたいと考え、“両立支援制度”を整備しました。入院時に、公的医療保険制度の対象外となる部分もカバーできる保険に会社が加入することで、従業員の経済的不安を軽減しています。また、長期休業後のスムーズな職場復帰や、退院後も治療を続けながら働き続けることができるように、“治療と仕事の両立支援マニュアル”を作成し、従業員がいつでも閲覧できるようにしています。」
8年連続で「健康経営優良法人(中小規模法人)」、2023年から3年連続で「ブライト500」の認定を受けています 「これら様々な取組みを一つずつ積み重ねながら、毎年“健康宣言”を定め、ホームページなどで社内外への発信も積極的に行っています。2017年からは、9年連続で“健康経営優良法人(中小規模法人)”に認定され、2023年からは3年連続で“ブライト500”の認定も受けています。今後もより一層、従業員の健康意識向上・心身ともに健康で働きやすい環境づくりを目指し、健康経営を推進してまいります。」
【取材協力】株式会社マルケイ
(2025年8月掲載)